1月7日より公開されている『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』は
『アベンジャーズ』等の複数の映画を1つの共通した世界観で描く、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の27作目にあたる作品です。
この記事にはネタバレが含まれています!
過去の強敵たちが続々登場!
2000年代以降、スパイダーマンは設定をリブートして3度の実写映画化が行われています。
1つ目はトビー・マグワイア主演、サム・ライミが監督した『スパイダーマン』シリーズ(3部作)、
2つ目はアンドリュー・ガーフィールド主演、マーク・ウェブ監督の『アメイジング・スパイダーマン』シリーズ(2部作)、
そしてるトム・ホランドが主演、ジョン・ワッツが監督ののMCU版です。
今作『ノー・ウェイ・ホーム』では、トビー・マグワイア版とアンドリュー・ガーフィールド版の合計5作の実写映画から、それぞれ以下の悪役(ヴィラン)が出演しています。
・『スパイダーマン』 ノーマン・オズボーン / グリーン・ゴブリン(演:ウィレム・デフォー)
・『スパイダーマン2』 オットー・オクタビアス / ドクター・オクトパス(演:アルフレッド・モリーナ)
・『スパイダーマン3』 フリント・マルコ / サンドマン(演:トーマス・ヘイデン・チャーチ)
・『アメイジング・スパイダーマン』 カート・コナーズ / リザード(演:リス・エヴァンス)
・『アメイジング・スパイダーマン2』 マックス・ディロン / エレクトロ(演:ジェイミー・フォックス)
ニュー・ゴブリンと2代目ゴブリンは出ていませnが、これはキャラが被るから致し方ないところ。
『3』のヴェノムも出てこないですが、エンドクレジットでもう1人のヴェノムが登場しており、
実質的には過去5作のヴィランが全て登場しているようなものですね。
驚くべきは全てのヴィランが、当時と同じ俳優によって演じられているということです。
よくこれだけ集めましたね。
過去のスパイダーマンも登場!
ヴィランだけではありません。
なんとトビー・マグワイアとアンドリュー・ガーフィールドも、かつて演じたピーター・パーカー(スパイダーマン)役で登場するということです。
それも単なるファンサービスのカメオ出演ではなく、ストーリーにしっかり絡んできます。
というより、3人のスパイダーマンが集結することこそが、ストーリーにしっかり絡んでおり、3人のスパイダーマンが集結することこそが、ストーリーのメインと言ってもいいレベルでの登場です。
MCUはこれまでもファンの期待の上をいく展開を見せてくれることが度々ありましたが、
「過去2シリーズの主役と悪役が全員同じ役者で再登場して、3人のスパイダーマンが力を合わせて、過去の悪役軍団と戦う」という、
正に「ぼくのかんがえたさいこうのすぱいだーまんえいが」レベルです。
大いなる力には大いなる責任が伴う
「スパイダーマン」という作品の根幹のテーマである「大いなる力には大いなる責任が伴う」という言葉。
形を変えつつも、前2シリーズではこの言葉がベンおじさんによって語られてきました。
そしてベンおじさんの死という悲劇と合わさることで、この言葉の重みがより鮮明になっていたのですが、
しかし今回のMCU版ではすでにベンおじさんは死去したことになっており、
トニー・スタークによってこれによく似た言葉が語られるのですが、正直どうにも今ひとつな印象でした。
(『アベンジャーズ/エンドゲーム』の後ならまた印象が違ったのでしょうが・・・)
個人的にはMCU版『スパイダーマン』の数少ない不満点だったのですが、
今回メイおばさんからこの言葉が語られたことで、ようやくMCU版もスパイダーマンとして完成したように感じました。
小ネタ・気になる点
ストーリーに直接絡まないながらも所々でファンをニヤリとさせる演出もふんだんに盛り込まれています。
(1回しか見ていないので見落としもありそうですが、とりあえず気になったのは以下の点)
マット・マードック(デアデビル)の登場
序盤、ミステリオ殺しとテロ容疑で取り調べを受けたピーターたち。
彼らが不起訴処分となるよう尽力したのが、弁護士のマット・マードック。
マットは昼は盲目の弁護士、夜はクライムファイター”デアデビル”として活動しています。
アメコミ原作ではスパイダーマンと共闘することも多いキャラですが、
MCUではNetflixオリジナルドラマ『デアデビル』の主人公で、
これまで映画版のキャラクターとの共演はありませんでした。
またNetflixが『デアデビル』を含む一連のMCUシリーズの制作中止を決めたことで、
「Netflixシリーズで展開された出来事は”無かったこと”にされるのでは?」という憶測が流れ、
その後の扱いが注目されていたのですが、今回ドラマ版と同じチャーリー・コックスが演じるマットが登場したことで
「存在」が確認され、胸をなでおろしたファンも多いのではないでしょうか。
余談ですが、本作のアメリカ公開と同時期に配信が始まった『ホークアイ』にも
『デアデビル』の悪役であるウィルソン・フィスク/キングピンが登場してします。
フラッシュポイント
いけ好かないキャラポジションのフラッシュことユージーン・トンプソンが自身の書いた本をマスコミに宣伝するシーン。
著作のタイトルは『フラッシュポイント』。
これはマーベル・コミックスと双璧をなすDCコミックスで展開されるマルチバースを扱った作品に出てくる用語と同一で、
一種のファンサービスのようなものでしょうか。
「医者に訊け」
手がムズムズするというネッドに対してDr.ストレンジが言った台詞。
ストレンジ自身がドクターである。
「探偵ごっこ」
MJとネッドに対するDr.ストレンジの台詞。
ストレンジを演じるベネディクト・カンバーバッチは
ドラマ『SHERLOCK』で名探偵シャーロック・ホームズを演じており、
一種の楽屋落ち的な台詞になっている。
ピーター3がMJを助ける
終盤の闘いの最中、高所から落下したMJをトム・ホランド演じるピーター(ピーター1)が救おうとしますが、
後少しということろでグリーン・ゴブリンに邪魔されて手が届かず、MJは落ちていきます。
それを救ったのが、アンドリュー・ガーフィールド演じるピーター(ピーター3)。
『アメイジング・スパイダーマン2』でグェンを救えなかったピーター3がMJを助けることで、
グェンを失った悲しみや自責の念を乗り越えるという展開になっています。
この戦いの前に、ピーター1とMJの仲睦まじい姿をなんともいえない表情で見つめるピーター3の姿も、この救助シーンに繋がっています。
「スパイダーマンは黒人だと思っていた。どこかに黒人のスパイダーマンもいるはずだ」
ピーター3の正体を知ったエレクトロの台詞。
原作では黒人の少年マイルズ・モラレスを主人公としたシリーズがあり、またマイルズを主人公とし、
本作と同じようにマルチバースを描いたアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』でも主人公を務めている。
これによりMCU(とそれにつながるマルチバース)にも黒人のスパイダーマンが存在しうることを暗示している。
シンビオートの破片
MCUお得意のエンドロール中に出てくる次回作以降への布石ですが、
今回は昨年12月に公開された『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』のおなじくエンドロール中に流れた映像の続きとなっています。
別ユニバースの住人だったエディ・ブロックとヴェノムがMCUのユニバースにやってくるのですが、
MCU世界の出来事を調べている途中で、ドクター・ストレンジの魔術でまた消えてしまいます。
その時、共生生物シンビオートの一部がMCU世界に取り残されてしまいます。
今後MCUシリーズでもヴェノムが登場することが可能となったわけですが、
逆に言うと、今後『ヴェノム』シリーズの次回作(があるとして)にトム・ホランド版スパイダーマンが登場するのは難しそうな状況ですね。
またマルチバースを繋げれば別ですが、今回のことで危険性は嫌というほど思い知ったでしょうから、
自分たちから繋げることはもうしないでしょう。
まとめ
3度にわたってリブートした”過去”を無かったことにするのではなく、マルチバースという形で肯定する懐の深さ(というか貪欲さ)と過去のスパイダーマンへの敬意。
当時の俳優が全て揃うという奇跡。
これだけ何でもかんでも詰め込みすぎると、かえってつまらなくなってしまいがちだが、
ストーリーを破綻させることなくまとめ上げ、「ヒーローとは何者なのか、ヒーローとはどうあるべきなのか」を正面から描ききった傑作です。